線維筋痛症ペーシング④睡眠改善

セルフケア

第4章 睡眠を改善する

線維筋痛症(FM)の人たちにとって睡眠不足は普遍的な問題です。睡眠問題には眠りにつけない、真夜中あるいは朝早くに起きてしまう、寝過ごすなどがあります。

FMの人は睡眠時間の多い少ないにかかわらず、元気を回復しません。

つまりFMの人たちは元気になって目が覚めるのではなく疲れて目が覚めます。

FMが原因の睡眠問題に加えて、この疾患に罹っている過半数の人が、睡眠時無呼吸や、むずむず脚症候群といった睡眠障害を経験します。

睡眠が改善されれば、生活の質が向上し、他の症状が軽減されるので、症状管理の最初は、睡眠問題に取り組むことに焦点を合わせます。

あなたが睡眠不足に悩まされているならば、下記の三つの取り組みから選んだ戦略を組み合わせて、睡眠管理プランを作ることを考えてください。

  • 睡眠衛生の改善
  • 薬の使用
  • 睡眠障害の治療
  • 睡眠衛生(睡眠環境と睡眠習慣)

睡眠は、不規則な生活、あるいは雑音のある環境、緊張と心配、寝心地の悪いベッド、そばに寝ている配偶者の騒音のようなもので妨げられます。

より良い睡眠を取るためには、これらに対処し、それから睡眠衛生の他の問題に取り組むことです。

1. 快適な睡眠環境を作る

良いマットレスを使い、光・騒音・温度をコントロールすることによって、質の良い睡眠に役立つ環境を作ってください。(注記:騒音はあなたのそばに寝ている配偶者のいびきを含みます。FMの一部の人たちは良質な睡眠のために配偶者とは別の寝室で眠ります)

2. 睡眠習慣を確立する

毎晩同じルーチンを繰り返し、就寝時刻を守ってください。就寝時刻の数時間前から徐々に活動レベルを下げて、毎晩同じ時刻に通常のルーチンをやり通し、睡眠の準備をしてください。

ルーチンは、例えば、コンピュータから離れて、決まった時刻にテレビを消し、入浴して、歯を磨いて、そして読書をするというようなものかもしれません。これらの睡眠習慣は、あなたがくつろぎ、心理的に睡眠の準備をする助けとなります。

3.リラックス

気を紛らすことが難しい時は、静かな音楽を聴くか、呼吸の回数を数える、呼吸に意識を向けるなどの方法で気を紛らすことを考えてください。

4. ストレスと心配をコントロール

ストレスがあると、たいていは筋肉の緊張が起こり、寝入るのが一層難しくなります。リラクセーション法を実行すれば、緊張した筋肉を和らげることができます。就寝前にリラクセーション法を試すか、入浴※してください。

入浴は就寝1時間以上前

リラクセーション法

心配事がいっぱいあって、なかなか寝つけないならば、毎晩就寝前に「心配事の時間」を取っておいてください。心配事すべてと、それらについてどうするかを書き留めてください。

眠ろうとしているときに心配事が現れたら、「私はもうそれに対処しました。どうするつもりか分かっているので、心配する必要はありません」と、自分に言い聞かせます。

あるいは次の日に心配事に対処するための時間を取っておくことができるので、「私は、明日それに対処する時間を取っておきました」と、自分に言い聞かせます。

5. 同じ時刻に起床する

就寝するのが日に日に遅くなっていくならば、毎日同じ時刻に起床するように目覚まし時計をセットすることによって、通常の睡眠時間に戻るように徐々に調節します。ふつうは、就寝時刻をより早い時間に変更して睡眠時間を補う必要はないかもしれません。体が自然に調節してくれます。

6. ペーシングを使う

日中あるいは夕方に活動し過ぎると、疲れているけど興奮しているという落ち着かない感じになることがあります。解決手段は、活動を制限内に保ち、就寝前にくつろぐ時間を作ることです。

7. 昼寝を制限する

昼寝すると、しばしば夜間の睡眠が妨げられます。昼寝すると夜眠りに落ちるのに苦労する、あるいは昼寝するといつもより睡眠の質が悪くなるというのならば、夜にだけ眠ろうと考えます(反対に、昼寝しても夜間の睡眠がじゃまされないならば、もっと多くの休息が必要かもしれません)。

8. カフェインとアルコール、タバコを避ける

カフェインの過剰摂取、飲酒、そして喫煙は、ぐっすり眠るのをより難しくします。就寝までの数時間は、コーヒー、紅茶、清涼飲料、チョコレートなどのカフェインが入っている製品を飲食するのを避けてください。就寝時刻前に飲酒するのを避けてください。アルコールは浅くてむらのある睡眠を引き起こします。(酔って寝ているのは気絶に近く睡眠とは全く別ものです)

タバコやカフェインは興奮剤です。つまり寝入るのを妨げる障害です。

薬の使用

線維筋痛症の人たちの睡眠問題を解決する確固たる治療薬がなく

多くの患者は薬物耐性(薬に慣れてきて効きめが弱くなる)が発現し、薬は時間とともに効果を失っていきます。この二つの理由から、睡眠問題にはさまざまな戦略を利用する柔軟で実験的な方法が用いられます。

あなたが薬で睡眠改善できるかもしれないと思うならば、処方箋なしで買える市販薬から始めます

処方薬を望むのなら、あなたに快く協力してくれる医師を探し出し、役立つ薬を見付けることです。

薬で睡眠を改善できる一方、事態を悪化させることがあります。いくつかの睡眠薬は時々使うぶんには効果的ですが、頻繁に使うと睡眠不足を引き起こすことがあります。

また、一部の薬は朝にふらつき感のような副作用を引き起こします。他の治療で使う薬に抗ヒスタミン剤あるいはカフェインのような成分が含まれているならば、その治療薬は睡眠を妨げるかもしれません。

睡眠障害疾患を治療する

FMの患者の大多数が一つ以上の睡眠障害疾患に罹っています。これらを治療すればFMの症状に効果があります。睡眠環境を改善しても、薬を使っても、睡眠が改善されなければ、主治医に、睡眠専門医を紹介してもらうことを考えてください。

睡眠専門医ならば、睡眠障害があるかどうか調べることができます。最もよく見られる睡眠障害は、睡眠時無呼吸症候群と、むずむず脚症候群の二つです。

睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に気道がふさがれて、呼吸が止まります。症状の発現は数秒から数分まで続くことがあります。そのとき人は、空気を求めてあえぎ、呼吸ができると再び眠りに落ちますが、そのことを本人は自覚していません。

この無呼吸が一晩に何度も起こると朝、人を疲れ果てた状態にしてしまいます。睡眠時無呼吸は線維筋痛症の疲労感を強めます。

睡眠時無呼吸は治療可能な疾患です。よくある治療はCPAP(持続的気道陽圧法)を使います。患者は、コンプレッサーが気流を送り込むマスクを装着して、気道を確保し、それで途切れない睡眠が可能となります。CPAPの使用で、睡眠時無呼吸を90%から100%取り除くことができます。

この疾患には、他の治療法も使います。朝、過度に疲れているか、あるいは日中眠くて困っているならば、睡眠時無呼吸に罹っている可能性があります。

むずむず脚症候群は脚の筋肉に強い違和感を覚えて、両脚を動かそうという衝動に駆られます。夜に起こりやすく睡眠を妨げます。

自主管理テクニックには、

  • カフェインなどの摂取量を減らす
  • 規則正しい睡眠パターンを確立する
  • 両脚を使う運動をする
  • 活動に没頭して気を紛らす
  • 温浴・冷水浴あるいはシャワーを使う
  • 鉄、葉酸塩、マグネシウムの摂取不足をなくすためにサプリメントを取る

などがあります。

幾つかのカテゴリーの薬、例えば、鎮静薬、ドーパミンに作用する薬、鎮痛薬、抗痙攣薬なども一助となるかもしれません。通常、むずむず脚症候群の治療に使われる薬はレキップとミラペックスの二つです。