線維筋痛症ペーシング⑤疼痛戦略

セルフケア
第5章 疼痛のための戦略

疼痛は線維筋痛症(FM)の主症状であり、全身の至るところで感じられますが、一つの部位から始まって広がるか、あるいは一つの範囲から別の範囲に移動します。手あるいは腕、足、脚、顔に、ひりひり感・ちくちく感、あるいは麻痺などの神経学的問題を伴うことがあります。

FMの疼痛にはさまざまな原因があるので、さまざまな戦略を使って疼痛を管理します。あなたが疼痛の問題を抱えているならば、以下の選択肢から疼痛管理プランを作ってください。

薬💊

FMの人たちは、薬で疼痛を治療します。どの薬も一貫した効果がなく、時々体が鎮痛薬に慣れ、薬の効き目がなくなるため、試行錯誤が必要になります。通例患者の投薬は、少ないごくわずかな用量から始めます。

薬の鎮痛作用を期待するFMの患者は、ふつうはアスピリンや市販の鎮痛薬など、処方箋なしで買える医薬品から始めます。他の人たちは UltramTramadol)、場合によっては、麻酔薬などの処方薬が助けになります。睡眠を改善する処方薬も疼痛に薬効があることがあります。

また、エラビル※(Amitriptyline)、プロザック、そしてパキシルといった抗鬱薬がしばしば試みられます。FDA(食品と医薬品を監理する米国の行政組織)は線維筋痛症の治療に三つの薬を認可しています。リリカ(pregabalin)、サインバルタ(duloxetine hydrochloride)、そしてサベラ※(milnacipran HCl)です。

エラビル=トリプタノール

サベラ=トレドミンのジェネリック薬

多くの線維筋痛症患者がしばしば、首あるいは肩に、圧痛点(筋肉あるいは筋膜の特定部位)の周囲に局在する疼痛疾患、筋筋膜性疼痛症候群(MPS)もあります。

MPSは、投薬と、圧痛点の局所麻酔薬の注射で治療できます。

一部の患者は神経因性疼痛あるいは神経痛があり、通常、手と足に灼熱感あるいは電気ショックのような感覚があります。このタイプの痛みはしばしば、抗痙攣薬で治療します。

運動と姿勢、動作

運動はFMの治療法として最もよく指示されます。運動プログラムを定期的に実行することにより、硬直を和らげ、運動不足に陥ることを防ぎ、気分を改善します。軽めのストレッチ運動は、FMに効果があります。

さらに、ストレッチ運動に頻繁な休憩を取り入れることにより、通常FMの人たちが硬直を和らげるのを助けます。

FM患者は、特に、どのように体の姿勢を保つか、そしてどのように体を動かすかを試すことによって、疼痛を軽減することができます。

多くの患者が、長時間同じ姿勢でいると硬直が増えて、疼痛が強まると分かります。このため、定期的に体を動かすことによって疼痛を避けることができます。同じく、野菜を切り刻むような反復動作をする時間を制限することによって、疼痛を避けることができます。

ペーシング

疼痛をよく引き起こす原因は、やり過ぎか、あるいはその人の制限を超えた活動です。ペーシングが安定とコントロールをもたらす方法を提供します。ペーシングはさまざまな戦略を伴います。

例えば、以下のようなものがあります。

全体的に活動レベルを下げる

作業に優先順位をつける。

人に任せる

休息を予定する

活動時間を短くする

集中力のいる作業と集中力のいらない作業を切り替える

最も負担の大きい活動を、1日の最も良い時間帯に行う

精神的・社会的な限界を知る

活動と症状の関連を見るために記録をつける

ペーシング戦略の詳細については第9章を見てください。

リラクゼーション

疼痛は、筋肉の緊張を引き起こすとともに、不安も生み出します。そして、この両方がさらに疼痛を強めることがあります。筋肉の緊張が直接的に疼痛を強めるのに対し、不安は、ストレスを増やし、無力感を増大させて、間接的に疼痛を強めます。筋肉の緊張とストレスの両方を解決する手段は、リラクセーションです。

また、リラクセーションは疼痛から気を紛らしてくれます。一部の人は、 “The Patient’s Guide to CFS and FM”(「患者のためのCFSFMガイド」)の第13章に記述したような、正式なリラクゼーション法あるいは瞑想法を定期的に実行する必要があります。リラックスさせてくれる他の活動には、運動、意識的呼吸、入浴、ジャグジー、マッサージ、休憩、音楽を聴くことなどがあります。

心配と憤り、憂鬱に対処する

疼痛感は、感情で強められます。心配とフラストレーションは筋肉の緊張を引き起こし、疼痛をさらに強烈にします。リラクゼーション法は、直接的に筋肉の緊張を和らげ、そして間接的にストレスを軽減して、疼痛を軽減することができます。

自助戦略を立て、時々薬を併用することにより、憂鬱を管理できます。感情の詳細については第19章を見てください。

疲労と睡眠不足を治療する

疼痛、疲労、睡眠不足は緊密に結びついています。疲労は疼痛感を深めます。我々は疲れていると、疼痛をより強烈に感じます。そのため、疲労を軽減することで疼痛感が小さくなります。同様に、睡眠不足も疼痛を強めるので、睡眠を改善することで疼痛をコントロールするのを助けることができます。この三つの症状の中では、たいてい、睡眠不足を最初に治療します。

温熱と寒冷、マッサージ

温熱、寒冷、そしてマッサージを一時的な疼痛緩和に使うことができます。温熱は、筋肉の緊張と運動しないことが原因の疼痛を軽減するために最もよく利用されます。温かさは血流を増やして疼痛を軽減し、硬直を和らげ、その結果、いくらかのリラックスを生みます。限局性の痛みに対しては、カイロあるいは温パックが頻繁に使われます。全体的な痛みの軽減に対しては、多くの場合、温水浴槽を使うか、ジャグジーへつかるか、あるいは電気敷毛布の上に横たわります。

冷却療法は、炎症局所への血流を減らして炎症を抑えます。冷却療法はまた、疼痛信号を送っている局所の感覚をなくすかもしれません。ジェルパック、氷嚢(ひょうのう)、あるいは冷凍野菜のアイスバッグも使えます。温熱も寒冷も、一度におよそ1520分を超えて治療に使うべきではありません。

激しい痛みがある部位をマッサージしても一時的に疼痛を緩和することができます。温熱のように、マッサージは血流を増やして筋肉の痙攣(けいれん)を和らげることもできます。次の3種類のマッサージを検討してください。自分の手でするセルフマッサージ、手動操作の機器を使うマッサージ、そして専門家によるマッサージです。

マッサージ師には慎重に強さの確認をするように言ってください。

問題解決

疼痛を引き起こすかあるいは強める状況を突き止めて、その状況を変える措置を講じることによって、ある程度疼痛をコントロールできます。例えば、かつてのように家事をこなすことができなくなったとします。問題解決を使うとき、さまざまな解決策をブレーンストーミングで引き出します。

(ブレインストーミング否定肯定を後回しにして、あらゆるアイデアを出す方法)

家事を数日に分けてする、休憩時間を取り入れて1日でする、家族あるいは雇い人の手を借りる、などの策を引き出します。それから、解決策がうまくいくかどうか確かめるために実際に試してみて、評価して、また試します。

あなたが職に就いていて、締め切りに追われて働くときに痛みが増すと分かったら、問題解決は幾つか具体化できるでしょう。あなたは、筋肉の緊張をほぐすのに時間をかけるようになるかもしれません。

さらに、自分の置かれた状況をもっと広く見て、再発問題が作業過負荷であることを確認し、仕事の時間を減らすか、役職を変えるか、あるいは仕事を休もうと考えるかもしれません。仕事の選択肢の詳細については第15章を見てください。

疼痛を紛らわす楽しい考えや活動

楽しい考えや活動に没頭すれば、気晴らしとなって、疼痛感を小さくすることができます。心象は、楽しいシーンを思い浮かべるとき、できる限りたくさんの感覚を伴うので、特に有効です。

ビーチに行きたいのならば、光が水の上でちらちらするのを見て、肌に太陽の暖かさを感じ、波が砕ける音を聞き、焼きそばのソースのにおいをかぎます。

また、喜びを与えてくれる活動をしても、疼痛を紛らすことができます。例として、読書、映画鑑賞、入浴、音楽鑑賞あるいは楽器演奏、自然の中で時間を過ごすことなどがあります。

肯定的な心の中のつぶやき

人の考えが、まず、気分に劇的な影響を及ぼし、次に疼痛知覚に劇的に影響を及ぼすことがあります。これは悪循環になることがあります。

症状が悪化すれば

「もう良くならない」

「絶望的だ」

といった否定的考えが浮かぶかもしれません。このような考えは人を不安にし、悲しくさせ、怒らせ、無力にし、疼痛を強めます。そしてもう一度否定的考えが浮かんで、さらに筋肉の緊張を引き起こします。

しかしながら、第31章で説明する 3ステップのプロセスを使うことによって、習慣になっている否定的考えを認識して、それを変える方法を習得することが可能です。あるいは、「認知療法」に長けているカウンセラーの手を借りてもいいです。