線維筋痛症ペーシング①状況理解

セルフケア

第1章 状況を理解する
線維筋痛症(FM)のような長期にわたる疾患になると、生活の習慣がすっかり変わってしまい、進むべき明らかな道が見つからないと感じるかもしれません。

この困惑するような状況のせいで、あなたはどうすることもできないと思ってしまいます。

しかし、疾患をコントロールするため、健康を改善するためにできることがたくさんあります。

この本はあなたにどうしたらいいかその方法を示します。この本の中のアイデアを使えば、線維筋痛症の管理計画を立てることができます。

最初の一歩 自分の置かれた状況を理解する

線維筋痛症で最初に具合が悪くなったとき、あなたは短期的な病気にかかっていて、それがたまたま長引いているだけだと考えたでしょう。

しかしながら、ある時点で自分の問題が短期的な病気と違うものであったという事実に直面します。

ふつう病気は医学的な治療をするか、あるいは時間が経てば終わる一時的な問題です。

FMによる生活の中断は一時的ではありません。短い中断があって、そのあと、前の生活を再開するどころか、あなたは慢性症状と制限に適応しなければならない事態に直面します。

そして、生活の大半は疾患に適応することが中心になります。症状があるにもかかわらず無理するといった戦略は事態を悪化させるだけということも分かったかもしれません。

この本は、疾患を管理するためのスキル(技能)を教えます。

第二に ストレスの影響を理解する

線維筋痛症になると、制限が課され、その症状は続きます。それだけでなく仕事する能力、人間関係、気分、将来の夢や希望、そして自我意識にさえ影響します。

日々症状を抱えて生活すること自体がストレスです。さらに疾患が家計を圧迫し、人間関係を複雑にし、将来への不安を大きくします。このようにして、疾患はストレスを増やします。
そして今度はストレスが症状を悪化します。適度のストレスでさえ、症状が大きく悪化することがあります。

例を示すと、疾患と感情の相互作用があります。心配、怒り、憂鬱、悲嘆のような感情は、重い病気による様々な中断や不安に対する普通の反応です。病気であることに対するこれらの反応は、線維筋痛症では特に強いかもしれません。なぜなら、この疾患は、あなたを感情的にし、コントロールしづらくするからです。
感情の強さは悪循環を引き起こすことがあります。疾患のために感情が強まり、今度は感情が症状を強めます。例えば、鬱状態の人は、わずかな痛みに弱いです。また、怒りはふつう筋肉の緊張を作るので、怒りによって痛みが増すことがあります。悪化した症状は、今度は、さらに多くの心配と悲観を作り出します。


疾患と人間関係、疾患とお金の間にも、同じような相互作用があります。
「他者から理解されない」「見捨てられた」「置いてきぼり」というような人間関係で感じるストレスは症状を悪化させます。
また、疾患は収入を減らすので、財政状況に影響を及ぼします。財政的な悩みがストレスを増やし、症状を重くします。


要約すると線維筋痛症になると影響が広範囲にわたり、疾患を管理するプランは単に症状に対処するだけでなく、すべての影響に取り組むものでなければなりません。

第三に 疾患に適応する
線維筋痛症は、疾患にどう対処するかで予後が左右されます。一例は、疾患が課した制限とどうつきあっていくかです。一つの共通する反応がプッシュ・アンド・クラッシュ(push and crash)の傾向です。

症状が重いときと、軽いときを行ったり来たりします。症状が重くなると寝込みます。そして症状が軽くなると活動を再開します。しかし、また症状が重くなりベッドに逆戻りします。後で説明するペーシングで適応の仕方を教えます。

ペーシング※を利用することにより、プッシュ・アンド・クラッシュを、もっと安定した予測可能なものに代えることができます。
(※ペーシング・・・ペース作り、自分の生活、活動のペースを確立すること)
これまでのところ、線維筋痛症は治療法が確立されていないので、この疾患への対応の仕方が、症状と生活の質に大きな影響を与え、しばしば内科的治療より大きい影響力を持ちます。

Charles Lapp 医師は「主治医にできることは限界があります」と言います。これらの疾患を抱えながら回復するカギは、「疾患を受け入れることと、ライフスタイルの変化を用いて疾患に適応することであり、それは医療では到底及びません」と、彼は言います。
この本の中の自主管理の取り組みは、改善を促し、場合によっては回復さえ促すこともできる対処手段を提供します。来る章は、気分が良くなるためにすることができるアイデアがたくさんあります。それらの戦略は、疼痛と不快の軽減、いっそうの安定、肉体的・精神的苦痛の軽減を手伝うことができます。


第2章 あなた独自の状況へつづく