前書き
線維筋痛症は病気の定義に入りません。病気の定義は既知の原因があり、症状のプロセスが理解されているものです。
線維筋痛症は、障害を特徴付ける徴候と症状のグループである症候群です。線維筋痛症は、他人にはわからないことから「見えない病気」と呼ばれています。
線維筋痛症の症状にはあらゆる面があり、どのような症状を探すべきかを知らなければ見分けることはできません。
20年前、私は自分の人生を支配していた痛みの理由を探す日々を過ごしていました。
今日私は、医師が線維筋痛症の治療に対して消極的である問題について取り組んでいます。
線維筋痛症を患うことは痛みを伴うだけでなく、無理解な軽蔑と疑いの目との戦いでもあります。
それによる自信の損失は私たちの存在のあらゆる部分に悪影響を与えます。
私が20年前に診断されたときの課題は、診断を受けることだけでした。
今日、ほとんどの患者は診断に至るまでに5 ~7人の医師の診察を受けており、診断に至るまで平均で 1. 9 ~ 2. 7 年かかります。
私は不幸にも診断されるまでに37人の開業医に会い、12 年を費やしました。
当時、患者が線維筋痛症の多くの側面を学び、理解するのに役立つような有益な情報はありませんでした。
悲しいことに、 ほとんどの医師は線維筋痛症に対して情報を持っていませんでした。
慢性疼痛は患者だけの問題ではなく、患者が苦しんでいる痛み、孤立、抑うつに関するものです。
EFIC ( ヨーロッパ 国際 疼痛 学会 連合) の会長であるHarald Breivik教授は次のように述べています。
痛みが緩和されないことの結果は大きく、西側世界の医療制度に大きな負担がかかっている。
慢性疼痛に苦しむ人々の治療を改善するために、世界中で何が起こらなければならないのでしょうか? 慢性的な痛みの原因となる病気や疾患の状態を理解し、認識することから始まると思います。
慢性疾患は自然に解決するものではなく、それについて考えたくない無知な人々にはほとんど気づかれず、理解されません。
慢性疾患により、かつては堅調だった生活のあらゆる側面が覆され、再定義されます。仕事を見つけて保持する能力から、個人的な関係を構築して維持する能力まで、病人の世界の事実は劇的に変化します。それでも私たちは努力を2倍にして、疑問に対する答えを探します。
過去10年間、Dr. タムラーと私は、線維筋痛症の多くの側面に焦点を当てた講義シリーズを通じて、これらの質問に答えることに携わっ てきました。私たちは国際的に講義を行ってきましたが、尋ねられる質問は常に聞き慣れた響きを持っています。なぜなら、それらは場所に関係なく同じだからです
「 線維筋痛症の原因は何ですか?」
「治療法はありますか?」
「どうすれば痛みを止めることができますか?」
「私の医者は理解してい ません。どうすればいいですか?」
「なんでそんなに痛いの?」
そのため、線維筋痛症との闘いが始まるときには、迷路のような医療検査や用語をナビゲートする知識、最新の医薬品に精通している、医師とコミュニケーションをとるスキルが不可欠です。
この本に提示されている質問は、私たちの講義や患者との会話であった質問、または診断を求めて出会った多くの医師に提示した質問です。
この本には、線維筋痛症患者のコメントも 含まれています。彼らの勇気は並外れたものであり、他の人の考えを助けます。
1990年代の初めから半ばまで、線維筋痛症とともに生きることは、今日と同じように困難でした。しかし今日では、何千人もの医師、科学者、大学、医療機関、企業、専門組織、政府機関が私たちのより良い未来を確保するために懸命に働いてくれています。
FDAは最近、線維筋痛症の治療薬としてリリカとサインバルタを承認しました。私たちは、線維筋痛症の痛み、記憶喪失、不眠を標的とする薬の開発に粘り強く取り組んでだ製薬会社に敬意を表します。
著者序文 1
線維筋痛症の予後はかつてないほど良好です。個人、支援グループ、組織、および医療専門家の努力により、線維筋痛症患者の生活の質が改善されました。線維筋痛症を診断および治療するためのより良い方法が間近に迫っています。線維筋痛症の症状は重症度が異なり、しばしば増減しますが、ほとんどの患者は時間の経過とともに改善する傾向があります。新しい情報を求め、他の線維筋痛症患者と話し、日々の優先事項を再評価し、ライフスタイルを変更し、希望に満ちた態度を保つために努力することで、患者は人生を最大限に生き続けることができます。
そして、新たに診断された患者にとって、この本があなたの旅を楽にし、線維筋痛症にもかかわらずより良い生活を達成することを願っています。
シャロン・オスタレッキ 博士
著者序文2
世界で4,000 万人が 線維筋痛症を患っています。なぜこの数字はとても高いのですか?
線維筋痛症の治療の最も重要な側面を議論するとき、4つの基本的な要素が常に含まれます
☆深い睡眠
☆ストレスの軽減
☆運動
☆食事の必要性(筋肉修復の構成要素であるタンパク質を組み込んだバランスの取れたもの)
これらの常識的な必要条件は全て人が完成させる必要があります。しかし時間が経つにつれて、社会や世界が慌ただしく 勤労、勤勉になるにつれて、個人がより短い期間で多くの活動を完了しようとするにつれ、健康の基本原則は無視されるようになります。
したがって、人々がストレスを受け続け、睡眠、運動、および食事の必要性を無視し続けると、線維筋痛症の発生率は増加し続けます。
マーティン・ S・ タムラー 医学 博士
その1 基礎編
線維筋痛症とは?
どのような症状ですか?
どのように治療するのですか?
線維筋痛症は、身体にも心にも劇的な影響を及ぼします。
多くの患者さんは、何十年もの間、自分の症状の現実を医師に信じてもらうことができませんでした。
線維筋痛症という言葉は、これまで蔑称として使われてきました。
多くの医療関係者は、線維筋痛症患者が経験する症状の大部分は、想像上のものであるか、うつ病の副産物であると考えています。
このような医師は、心の底からそう思っているのです。
この患者グループは、
「クレイジー、心気症、そして/または、薬物を求めている 」
と考えています。
さらに、医師を含むほとんどの医療専門家は、
この患者層は、最も時間がかかり、苛立たしい患者層の一つとしています。
線維筋痛症入門
Q1.線維筋痛症とは?
線維筋痛症は、病気というよりも、症候群、つまり一緒に起こる症状のグループです。
線維筋痛症は、以下のような特徴があります。
慢性的で広範囲な筋骨格系の痛みで、少なくとも3ヶ月以上持続します。
体の四肢に少なくとも3ヶ月間持続する慢性的で広範囲な筋骨格系の痛み、こわばり、不快感、軟部組織の圧痛を特徴とします。
また全身倦怠感、睡眠障害なども特徴とします。
最も一般的な痛みの部位は、頸部、背部、肩部、骨盤部、手などですが、体のどの部位でも発症します。
線維筋痛症の患者さんは、様々な症状を経験します。
この症状は、時間の経過とともに変化します。
この症状は、筋肉の持久力を超えることによって生じる筋持久力障害に分類されます。
筋繊維が機械的にロックされ、痛みが生じる。
このような痛みを生じる部位は圧痛点として知られています。
圧痛点は、線維筋痛症以外にも
感染症、結合組織障害、外傷で筋肉を痛めた場合でも起こります。
筋肉の持久力が低下すると、筋肉痛を発症するリスクが高まります。
一つの筋肉を酷使すると、その筋肉はロックされ、収縮しない状態で動けなくなる。
このような筋肉は、しばしば「チャリーホース(=こむら返り)」と呼ばれることがあります。
筋肉の集団や部位がこのような現象に陥った場合
『筋筋膜性疼痛症候群』
または
『局所性筋痛症』と呼ばれます。
腰の上と下、右と左など、体の四方に広がる場合は、線維筋痛症と呼ばれます。
Q2.線維筋痛症の筋持久力低下状態を引き起こす(または持続させる)ものは?
・睡眠障害
・ストレス と 緊張
・内分泌の問題(甲状腺 と 副甲状腺障害)
・神経疾患( 神経根障害、末梢神経障害、多発性硬化症、 重症筋無力症)
・ミオパチーおよび筋肉の欠乏
・感染症
・結合組織疾患(ループス、リウマチ、関節炎)
・栄養不足
・慢性の微小外傷( 姿勢の悪さ、 繰り返し動作によるダメージ)
・マクロトラウマ( 自動車事故、 突然の衝撃 傷)
・術後の影響( 不動、けいれん、筋肉痛)
・体調不良 または 衰弱状態に つながる その他の状態
Q3. 線維筋痛症に関連する筋肉の機能不全をいくつか挙げていただけますか?
線維筋痛症の患者は筋肉の生理機能に多くの異常なパターンを示します。
・安静時でも高いレベルの筋肉緊張
・非対称性: 体の片側の筋肉緊張レベルが、反対側よりも高い。
・共活性化: 運動中に機能するように設計されていない筋肉は活動を緊張させる ことがわかっています。
・運動後の回復の失敗: 使用後に筋肉が弛緩状態に戻らない
・筋繊維の短縮と感受性の増大を伴う筋組織の長期的な萎縮
これらの異常の多くは、痛みの存在に対する患者の体の反応という点で理にかなっています。
人間は痛みを感じると緊張します。一般的な例 は、痛みのある部位を庇って体の姿勢をひねったり固定することです。これにより、胴体と筋肉組織の柔軟性が失われます。
さらに、激しい痛みを感じている人は、痛みを最小限に抑えるために活動を避ける傾向があり ます。
これにより、筋肉の萎縮、コンディショニング の低下、および柔軟性と強度の喪失からなる筋肉廃用症候群が生じます。
Q4.なぜ線維筋痛症は長い間発見されなかったのですか?
要因の1 つは、線維筋痛患者の80%から95% が女性であるという事実です。
実際、線維筋痛症は20歳から50歳の女性の慢性的な筋骨格痛の最も一般的な原因であると考えられています。
主に女性が発症する他の症状と同様に、その症状は心気症に起因することがよくあります。
1950 年代 と 1960 年代 の米国では、 線維筋痛症は「 心因性リウマチの症状」( Barrett, 2000)と見なされることが多く、 患者はヒステリックであると考えられた。
最近まで多くの医師は、痛みや疲労を訴える人を悪意のある人に分類していました。
線維筋痛症の身体的現実の証拠が増えているにもかかわらず、性差と事実上の不可視性は鈍感な医師と患者の関係に問題を起こし、最悪の場合匙を投げられる可能性があります.。
線維筋痛症の性差は、この障害を持つ男性にも悪影響を与える可能性があります。
線維筋痛症 は「女性の症状」と定義されているため、症状のある男性は乳がんのように、診断が見落とされる可能性があります。
また
【男らしくあれ】
【弱音を吐くな】
といった社会的理想のせいで心理面でも余分な負担があります。
ジェリー(患者さん)のコメント:
線維筋痛症は
あなたが感じているほど周りから病気に見えません。
また、何人かの人々は信じてもくれません。
しかし、それはこの病の最も難しい部分ではないのです。
あなたは、痛みや苦悩を理解できない(または理解したくない)人がいることを知る必要があり ます。
困難な状況では、あなたの考え方が鍵です。
グラスに水が半分入っている事を
「半分しか無い」と思うか
「まだ半分もある」と思うか
心の持ちようが鍵を握ります。
私は惨めで誰にも言えない日もあれば
大丈夫!という日もあり
それほど悪くないと思えた日もありました。
そんな時は「まだ半分もある」と言ったような心持ちでした。
Q5.線維筋痛症の認知度は高まっていますか?
線維筋痛症の認知度は確実に高まっており、今後もその傾向は続くでしょう。
この認識の高まりに対する最近の最も重要な貢献の1 つは、 米国食品医薬品局 ( FDA) による リリカ ® ( プレガバリン) の承認です。
2007 年 に、2008 年 にサインバルタ( デュロキセチン) が発表されました。 1980年代のうつ病の管理と治療において、 同様の現象が発生したことが歴史 から明らかになっています。
プロザック(抗うつ薬)が発売される前は、うつ病はほとんどの医師によって議論されたり治療されたりすることはめったにありませんでした。
プロザックとその後の同様の薬剤 ( 選択 的 セロトニン 再 取り込み阻害薬 [ SSRI]) の発売 後、うつ病に対する理解が深まり、うつ病の治療は全ての医師 にとって一般的なものになり ました。
製薬会社が関与する前に、線維筋痛症の可視化 に最も重要な貢献の1 つは、1990年に米国リウマチ学会 (ACR) が診断基準を作成したこと でした。
世界中で、線維筋痛症は「確かに医学的問題」 であると述べた世界保健機関によって承認され た国際宣言に署名しました。
現在、 線維筋痛症の臨床診断は、18の圧痛点 ( 4 kgの圧力で触診したときに痛みを感じる領域) のうち11か所検出することに基づいてい ますが、この状態での圧力に対する感受性の増加は、圧痛点を超えて全身に及びます。
公式の診断基準は、身体全体の「圧痛」 点に関する知識を持つ医師による検査に基づいていますが、この「分類」システムは、おそらく研究における患者の分類に最適です。
しかし
場合によって、調子の良い日の圧痛点が8か所、調子が悪い日は15か所ということもあります。
そうすると日によって診断がマチマチになってしまいます。そのため、診断はACR基準だけに頼るべきではありません。
一部の医師は、線維筋痛症を受け入れることを依然として拒否していますが、ますます多くの医師が線維筋痛症を認識して治療しています。さらなる研究と教育により、この数は増え続けることでしょう。